アドマイヤジュピタ(2003.3.1)

アドマイヤジュピタ 牡 栗毛 2003.3.1生~2023.11.28没 早来町・ノーザンファーム生産 馬主・近藤 利一氏 栗東・友道 康夫厩舎

アドマイヤジュピタ(2003.3.1)の4代血統表
フレンチデピュティ
栗毛 1992.1.30
Deputy Minister
黒鹿毛 1979.5.17
Vice Regent
栗毛1967.4.29
Northern Dancer 1961.5.27
Victoria Regina 1958.5.18
Mint Copy
鹿毛 1970.2.24
Bunty’s Flight 1953.4.26
Shakney 1964
Mitterand
鹿毛 1981.2.19
Hold Your Peace
鹿毛1969.1.24
Speak John 1958.2.7
Blue Moon 1948
Laredo Lass
黒鹿毛 1971.3.19
Bold Ruler 1954.4.6
Fortunate Isle 1959.4.24
ジェイズジュエリー
黒鹿毛 1995.4.13
リアルシヤダイ
黒鹿毛 1979.5.27
Roberto
鹿毛 1969.3.16
Hail to Reason 1958.4.18
Bramalea 1959.4.12
Desert Vixen
黒鹿毛 1970.4.19
In Reality 1964.3.1
Desert Trial 1963.5.14
アサーション
鹿毛 1987.5.7
Assert
鹿毛 1979.4.17
Be My Guest 1974.4.12
Irish Bird 1970
Yes Please
栗毛 1976.4.27
Mount Hagen
栗毛 1971.3.4
Thankfull
栗毛 1960

<5代血統表内のクロス:Northern Dancer4×5>

アドマイヤジュピタ(2003.3.1)の血統の簡易まとめ
母父 祖母父 曾祖母父
フレンチデピュティ
(Deputy Minister系)
リアルシヤダイ
(Roberto系)
Assert
(Northern Dancer系)
Mount Hagen
(Bold Ruler系)
牝系 母の何番仔?
いとこアドマイヤメイン
(No. 13-a)
3番仔
(不受胎後)

*

2008年の第137回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 14 アドマイヤジュピタ 牡5 58 岩田 康誠 3:15.1 11-11-10-5 34.7 494
[-8]
友道 康夫 3
2 8 メイショウサムソン 牡5 58 武 豊 3:15.1 アタマ 9-9-6-3 34.9 514
[-4]
高橋 成忠 2
3 13 アサクサキングス 牡4 58 四位 洋文 3:15.5 2 1/2 3-4-2-2 35.5 500
[-4]
大久保 龍志 1
4 4 ホクトスルタン 牡4 58 横山 典弘 3:15.6 3/4 1-1-1-1 35.8 516
[+6]
庄野 靖志 6
5 2 アドマイヤフジ 牡6 58 川田 将雅 3:15.8 1 1/4 7-8-9-10 35.2 530
[-8]
橋田 満 10
2008年の第137回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
13.3 – 12.1 – 11.4 – 12.2 – 12.1 –
12.2 – 11.8 – 12.8 – 12.6 – 12.5 –
12.7 – 12.3 – 11.8 – 11.3 – 11.5 –
12.5
ラップの
累計タイム
13.3 – 25.4 – 36.8 – 49.0 – 1:01.1 –
1:13.3 – 1:25.1 – 1:37.9 – 1:50.5 – 2:03.0 –
2:15.7 – 2:28.0 – 2:39.8 – 2:51.1 – 3:02.6 –
3:15.1
上り 4F 47.1 – 3F 35.3

京都芝3200mの古馬頂上決戦。2008年の第137回は晴の良馬場、14頭立てで競われました。戦前1番人気は前年の菊花賞(GI)馬アサクサキングス(2004.3.23)。2番人気は前年の第135回を3分14秒1という当時史上2位の好時計で制した防衛王者のGI4勝馬メイショウサムソン(2003.3.7)。そして3番人気が前走阪神大賞典(GII)を2と2分の1馬身差の快勝を収めてやって来た上がり馬アドマイヤジュピタ。

結果的にはファンはよく分かっていて、上位人気3頭での決着となった一戦において、勝利を収めたのはアドマイヤジュピタ。直近2走が最内枠発走で、この大一番は逆に大外枠発走となったアドマイヤジュピタ。鞍上の岩田康誠騎手によりますと、ゲートで潜り込む形になってしまい発馬のタイミングが合わず出遅れたようですが、それで却って腹が決まったようにも見えました。レースの逃げ先導を務めたのは父仔4代天皇賞制覇の偉業を賭けたホクトスルタン(2004.5.11)。単騎で行かせるといつでも怖い横山典弘騎手が作り出したペースは1000m通過1分1秒1、2000m通過2分3秒フラットという淀みない流れ。その流れの中、アドマイヤジュピタは道中終始メイショウサムソンを右斜め前方にマークする形でレースを進めていました。相手はコレという見定めと共に「名手は名手を知る」というところで「ユタカさんの後ろに付いて行けば間違いない」という感もありました。

京都の要所、3角から4角の坂の下りにかけてレースは動き出し、勢い良く進出を始めたメイショウサムソン、それを敢然と目掛けて追うアドマイヤジュピタ、その前に逃げたホクトスルタン、終始先行策で勝ちに行く競馬を見せたアサクサキングス。4角から直線。逃げたホクトスルタンは内をキレイにコーナリングしたものの、番手追走のアサクサキングスの後肢が外に膨れる形となり、伸びようとしたメイショウサムソンが煽りを食うような体で外に振られました。そこを大外から目の覚める末脚で一気に先頭に躍り出たアドマイヤジュピタと岩田騎手。普通はこの脚勢であれば勝負ありでした。けれど、アドマイヤジュピタが先頭に立ってソラを使うような仕草を見せると、その隙を逃すまいと改めて伸びて来たのがメイショウサムソン。カメラアングルによっては、ゴール前ではいったん差したようにも見えた防衛王者の末脚でしたが、「負けるものか!!」ともう一段伸び直したアドマイヤジュピタ。決勝点、タイム差なしの際どい勝負を「アタマ」だけ先んじたは、アドマイヤジュピタ。2003年生まれ世代、同期のクラシック二冠馬にして天皇賞・春秋連覇のメイショウサムソンを相手に、3歳時の右飛節の骨折を乗り越えてやって来たアドマイヤジュピタが「GI初挑戦初勝利」を遂げたという結末。血統的にはアドマイヤジュピタはアドマイヤメイン(2003.3.13)のいとこであり、いとこが東京優駿(GI)でメイショウサムソンの2着に敗れた借りを、アドマイヤジュピタが天皇賞・春でお返ししたというところでもありました。

アドマイヤジュピタの天皇賞・春勝ちにより、近藤利一オーナー、友道康夫調教師、岩田騎手の三者いずれも天皇賞・春初制覇となりました。特に友道師はこの天皇賞・春がGI初優勝でした。2023年現在をときめくトップトレーナーの一角である友道師、2002年11月30日の初出走以来、7年目で大輪を咲かせられました。

*

アドマイヤジュピタの父はフレンチデピュティ。現役時代は4勝を挙げたもののグレードレース勝ちはベルモントパーク・ダート8ハロンのジェロームH(米GII)のみに留まったフレンチデピュティでしたが、フレンチデピュティの代表産駒を改めて確認してみれば、

  1. Left Bank(1997.5.9)
    →ホイットニーH(米GI)、シガーマイル(米GI)、ヴォスバーグS(米GI)ほか。2002年のエクリプス賞最優秀古牡馬に選出されるも、同年に疝痛により夭折。彼が存命であれば、北米でもフレンチデピュティの血は継承されていたのではないでしょうか
  2. ノボジャック(1997.3.24)
    →JBCスプリント(統一GI)、東京盃(統一GII)、黒船賞(統一GIII)2回、群馬記念(統一GIII)2回、クラスターC(統一GIII)、北海道スプリントC(統一GIII)ほか
  3. クロフネ(1998.3.31)
    →NHKマイルカップ(GI)、ジャパンカップダート(GI)、武蔵野S(GIII)、毎日杯(GIII)ほか
  4. Mayo On the Side(1999.2.9)
    →ヒューマナディスタフH(米GI)ほか。牝馬
  5. Genereux(1999.9.10)
    →5月25日賞(亜GI)ほか
  6. House Party(2000.4.4)
    →プライオレスS(米GI)ほか。牝馬
  7. エイシンデピュティ(2002.4.9)
    →宝塚記念(GI)、金鯱賞(GII)、京都金杯(GIII)、エプソムC(GIII)ほか
  8. アドマイヤジュピタ(2003.3.1)
    →天皇賞・春(GI)、阪神大賞典(GII)、アルゼンチン共和国杯(JpnII)。本稿の主役
  9. フレンドシップ(2003.5.9)
    →ジャパンダートダービー(統一GI)ほか
  10. ピンクカメオ(2004.4.24)
    →NHKマイルカップ(JpnI)ほか。牝馬
  11. レジネッタ(2005.5.11)
    →桜花賞(JpnI)、福島牝馬S(GIII)ほか。牝馬
  12. サウンドトゥルー(2010.5.15)
    →チャンピオンズカップ(GI)、東京大賞典(GI)、JBCクラシック(JpnI)、日本テレビ盃(JpnII)、東京記念、金盃2回ほか。せん馬

と、多種多様な産駒を送り出した名種牡馬でした。産駒の成績を見れば、基本はマイルから2000mあたりを主戦場とする仔が多く、2500m以上の重賞3勝のアドマイヤジュピタは鬼っ子的な感じもします。アドマイヤジュピタの長距離上手は名うての長距離種牡馬であった母父リアルシヤダイから受け継いだのでしょうか。

そしてまたアドマイヤジュピタが天皇賞・春を制した2008年は、桜花賞をレジネッタ、宝塚記念をエイシンデピュティが制していて、さながら「春のフレンチデピュティ祭り」のような産駒の活躍ぶりを見せていました。メイショウサムソンは天皇賞・春、宝塚記念と2レース続けてフレンチデピュティ産駒にしてやられた、というところでした。

*

アドマイヤジュピタはノーザンホースパークで乗馬として活躍していましたが、2023年11月28日、老衰のため死亡という報せが入りました。

父フレンチデピュティから受け継いだ栗毛の流星も麗しかった、アドマイヤジュピタ。20歳、逝くにはまだまだ若かった。今は、ただただ、合掌。

 

では、以上雪の家(ゆきのや)でした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

*

[アドマイヤジュピタ(2003.3.1)の主な競走成績]

  1. 天皇賞・春(GI)、阪神大賞典(GII)、アルゼンチン共和国杯(JpnII)

通算14戦7勝、2着2回、3着2回。

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